『婆と婆あば』

 “夢ぶたい” 第七回公演(2019年)
ばばあば』

















 演劇評

 1月20日に平川市文化センターで上演された「平川市演劇集団・夢ぶたい実行委員会」主催の第7回公演「婆と婆あば」を観ました。会場に入ると満席です。地方の演劇界で、この活況と観客動員力は極めて素晴らしいことです。これは齋藤千恵子会長が率いる「夢ぶたい」の皆さんが、7年間積み重ねてきた公演が、確実に町の人々に広く好かれ、今や「市民劇団」として強く支持されている証拠です。
 旗揚げ公演を拝見した私は、著名な山崎之也さんの脚本と演出が、その後も「面白くて、やがてジーンとくる地域に根差した心温まる題材」をブレることなく守り、観客が分かりやすい上演スタイルを貫いて、細やかな演出と演技指導をされ続けていることに敬意を覚えます。
 今回は、元気な婆さまがいる隣同士の二つの家族の身近な問題を縦糸にしながら、両家の女子高校生の進路決定での葛藤を横糸にして、この先、どう解決するのだろうと観客が気をもむ設定です。しかし二人の婆さまが奔走し、そのおかげで家族が「本音をぶつけ合って助け合いすること」に気付くと、解決が見えます。
 この約2時間の上演中、肩ひじ張らず、観客を飽きさせずに展開していく脚本の巧さによって、観客からはひっきりなしに笑いが起き、見せ所では拍手です。長く舞台公演に携わった者として、「舞台と観客の一体化という演劇の理想」を見る思いがしました。
 劇で観客を笑わせて、最後に感動をジワリと届けるという芝居作りは難しく、柔軟で芯のある演技力が必要です。これをプロの声優でもある齋藤千恵子さんが勘所を押さえた演技力により共演者を引っ張り、演出の意図に応えて実現させていたのは見事です。出演者は客演や新人も明断なセリフ回しとキャラが立った演技で好演でした。
 特筆は「夢ぶたい」の豪華さです。小野郁子さんが代表を務めるよさこいチーム「花嵐桜組」が高度な舞と踊りを劇に溶け込ませて披露し、歌手のかすみさんが歌うのです。さらに大団円では、「尾崎ねぷた同心会囃子方」が登場し、「花嵐桜組」「良い音を楽しむ会」、「kuroishiよさこい踊り組」「夢ぶたい実行委員」の総踊りと融和し、観客の琴線を揺さぶりました。これこそ「地域劇団」の真骨頂であり「家族と地域には、思いやりと共生が大切」というメッセージとして長く観客の心に残る名場面でした。
 柏木農業高校生有志が舞台美術を担当したこの作品は、1回上演で終わらずに、平川市の児童生徒や高校生たちを招いて観てもらいたい良質の公演でした。
 (国学院大学兼任講師・演劇学、弘前市在住)